あるドキュメンタリーを見た。その人たちをわたしは知らなかった。1年前に歳の差フレンズから聞いた。
『おもしろいことをやっていたんだよね。残念だ。』と言った。父が生涯をかけて山を愛していたことを知っていた友人だから、その人たちの話をしてくれたのだと思う。
世界最難関への挑戦。本人たちのインタビューがあった。そこには強い意志だけでなく、葛藤も見てとれた。命をかけての挑戦は、どれほどの経験をもってしても恐ろしく思うことがあるのかもしれない。
『眠れない。こんなことは初めて。』そう言った若手。
ベテランは『強い人間でありたい。』と言葉にした。
自分たちは挑戦の成功だけを願っていたと思う。1年が経ち、残された映像と共に最後を迎える。その映像を確認したスタッフたちは何を思ったのか。アクシデントが発生したそのとき、彼らは何を考えたのだろうか。
誰もが口にして家を出る。
『生きて帰ってくる』
危険ととなり合わせだけれど、いままでは無事に帰還した。残された家族はどう考えたのだろう。自分たちを置いて果敢に挑戦することを応援しつつも、それ以外の心もあったのではないか。その家族たちの姿に、母を重ねた。そして、娘であるわたしを重ねた。
いつのころからか、わたしは父が山で死ぬと思っていた。捜索はしない、それが自然だし本望だよねと伝えていた。
ひとがこの世から離れるときはコントロールができない。けれど、父もわたしも衰えを感じ死が近いことがわかっていた。しかしこれがアクシデントだったとき、残された人はその最後のときはどうだったのか?と疑問を持つと思う。答えは出ない。それでも、ああだったのかな、こうだったのかな…とそのひとの軌跡を考えることが、しあわせのひとつなのではないかと思う。
常に『帰りを待つ』ことをやってきたわたしとしては、ほかのドキュメンタリーとは異なる思いで彼らに拍手を送った。ベテランが願った通り、いつか後進たちが未開拓ルートに果敢に挑戦していくよね。
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